太陽光発電 激安が必要としているもの
邦銀は発展途上国に代わる、先進国での新しいビジネスの展開を急いでいた。
そんな折、当時のS銀行のライバルである富士銀行(現在みずほグループ)が、アメリカでH・ファイナンシャルという金融会社を買収した。
この会社にはS銀行のシカゴ支店が融資しており、時折返済が遅れる札付きだったので、富士銀行はとんでもない買い物をしたと思い、真似する必要なしと考えた。 ところが、国際企画部の海外拠点設置担当の私には「米国で何もしないでいいのか」というプレッシャーがだんだんきつくのしかかってきた。
しかし私はアメリカに出て行くのはどうしても不賛成だった。 実際富士銀行はHヘの投資で、その後たいへんな苦労をすることになった。
アメリカは競争が厳しく、弱いところは木っ端微塵にやられる。 S銀行に米銀や米国の金融会社を経営できる人材などいないことは明白であった。
カリフォルニアの日系移民の支援から始まった小さな銀行である加州S銀行の経営にさえ、当時四苦八苦していた。 そこで私は同じ海外に進出しなければいけないのであれば、世界で銀行が一番保護されていて、絶対に潰れない国へ行くこと。
それに間違ってもS銀行員が自分で経営せず、現地のマネージメントに任せること。 この二つの条件を満たすものを狙おうと考えた。
「銀行が一番保護されている国」として考えられたのはスイスとドイツ。 そして、「日本人では絶対できないバンKの種類」としては、スイスの資産運用業務、貴金属取引などが際立っていた。
そんなことを考えている時に、スイスのルガノにあるG銀行の過半数の株式を取得しないかという話を、当時のS銀行スイスの頭取であるエリックーG氏がもたらした。 Sと英国のマーチャントーBであるJ・ヘンリー・S(現在は投資銀行部門がソロモンースミスーバーニーに買収され、資産運用部門だけになっている)は歴史的に親しい関係にあり、当時の東京事務所長であるスティーブンーブリスビー氏から、「ドクター・Gが東京に来るので一緒に夕食をしないか」とOさんが招待された。
「君も来いよ」と誘ってくれたので、お供をすることにした。 そこでHの話が出てきて、「Sはどうするのか」と言うので、私は「アメリカには行かない。
行くならスイスだ」と言った。 ドクター・Gは正直びっくりしたのじゃないかと思う。
なぜなら通常の邦銀の行動パターンは、一人がやれば後はみんな右へならえだからだ。 だがドクター・Gは具体案を持っていた。
「ルガノにあるG銀行の親銀行である、イタリアのA銀行が倒産し、Aの債権銀行団がGの株式を差し押さえた。 5二パーセントぐらいだろう。
これはやがて売りに出される。 Gの会長は前スイス外国銀行協会の会長でもあったガルツオーニ氏で、私は彼の後任として同協会の会長になった。
もし興味があるなら私がら話してみよう」鶴のひと声への不信私の直属の上司Mさんは、本件を熱心に支援し、ドクター・Gのいるチューリッヒ、Gのあるルガノ、スイス銀行当局のあるベルンなどにも一緒に出張した。 チームのメンバー補充をお願いしたところ、調査部などから人員を借り出してくれた。
しかしそのMさんも、内部のコンセンサスを得るのが難しく、これ以上進めるのは無理という局面に立たされた。 Sの役員の中には、A銀行がバチカン政府に近く、「坊主の銀行」であるから買収はまかりならん、という訳のわからないことを言う人もいた。
彼の論理は、「東欧や中南米が経済的に発達しないのはカトリックのせいである。 カトリックでは貧乏人は施しを与えられるのが当たり前という価値観がある。
この価値観が災いして、カトリックの国は期限にキッチリとお金を返さない。 そんな状態の国では金融は発達しない。
そういう国との付き合いが多いと思われる『坊主の銀行』に投資するなど反対だ」というものであった。 こういう論理を振りかざす人間とは、正面から話をするのは難しい。
彼に資産運用業務、スイスープラン債発行主幹事業務、金のトレーディングなどSの銀行員ではできない業務ができるようになると説得しようにも、聞く耳持たずで、為す術がなかった。 1984年の正月が明けた頃だったと思う。
Mさんが私の席に来て、「K君、これは駄目かもしれない。 打ち切りの起案書を準備しておいてくれ。
まだ出さないで、君が持っていてくれればいい」と言った。 私の反応は「これはまずい。
何かウルトラCを出さなければ」というものであった。 私は早速ドクター・Gに電話した。
「このままでは本件は潰れる。 しかし私もあなたも同様だが、潰してはいけないと考えている。
Mさんも心の中は同様だと思う。 そこで何かウルトラCを考えなければならない」。
ドクター・Gは「自分でできることなら何でもするが、どんなことをしたらいいのか」と聞いた。 私は、「ドクター・G、あなたはスイス中央銀行総裁のRトビラー氏と親しいだろう。
彼からSの会長か頭取に電話して、スイス中銀としてはGがSに買われることを歓迎しますとでも言ってもらえないだろうか」。 彼の答えは「考えてみよう」だった。
数日後、Mさんが私のところに飛んできた。 「K君、あれはできる、全力で進めてくれ」。
私が驚いて経緯を尋ねると、「今Hさんに言われたのだが、MK日銀総裁から会長か頭取に電話があったらしい。 なんでもスイス中銀からMKさんのところに連絡があって、SがGの買収を検討しているようだが、この話進めてはどうかというような内容だったらしい。
それをMKさんが伝えてきた。 Hさんはやる気だ」Sは上限金額を付けた上で、二番高い入札価格に300万ドルを加えた価格」という「金額を定めない札」を入れ、米銀などを破って目標を達成した。
しかし、私はこのプロセスにすっかり疲れてしまい、Sを去ることを決心した。 自分が担当者として一生懸命企画して上げても、「坊主が嫌い」のような論理を振り回す人がいれば、下っ端である私の案は通らない。
それに対して日銀の何とかさんが、深いことは何にも考えずとも電話を入れれば、いとも簡単に経営方針はひっくり返る。 これは私が今後とも働き続けるべき場所ではない、これが私の結論であった。
結局SはG銀行の過半数の株式を1億5500万ドルで買うことになった。 それから15年後の1999年に、この株式を15億ドルで売却したのであるから、投資としてはたいへん成功したものになった。
Oさんはその後ロンドン駐在の欧州総支配人になり、Gの取締役を兼ねることになった。 Gの買収は、私にとってはお世話になったSへの置き土産になった。
ウォールストリートへところで、この話を進めるためチューリッヒに一人で龍もっている週末に、ドクター・Gが私を自宅に招き、二人でゆっくり話す機会を作ってくれた。 彼が私に「この買収が完了した暁には、ルガノに来てスイスーバンカーになる気はないのか」と聞いた。
私は「実はウォール街に行こうと思っている。 スイスーバンKは今回も調査して感じたが、素晴らしいバンKービジネスで大いに憧れる。
しかしスイスの金融界は狭い、排他的な社会で、外国人が入りこめる余地はないと思っている。 その点アメリカは人種の増蝸で、私のような日本人でも頑張れば機会は与えられるように思う」と答えた。
ドクター・Gは必ずしも私の見解には賛成しなかった。
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